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名古屋高等裁判所 平成10年(ネ)798号 判決 1999年7月22日

控訴人(被告) 株式会社アイピーエス・コーポレイション

右代表者代表取締役 Y1

控訴人(被告) Y1

控訴人(被告) Y2

右三名訴訟代理人弁護士 竹川進一

被控訴人(原告) 株式会社コスモス・コーポレイション

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 福井正明

同 石坂俊雄

同 村田正人

同 伊藤誠基

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人のリース料ないしはリース機器使用損害金請求を棄却する。

三  被控訴人の前項の金員に対する遅延損害金請求を却下する。

四  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

(控訴人)

一  原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

(被控訴人)

一  本件控訴を棄却する。

二  原判決を次のとおり変更(減縮及び拡張)する。

三  控訴人らは、被控訴人に対し、連帯して一六八七万三三九七円及びこれに対する平成一一年三月二五日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

四  控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二事案の概要

本件事案の概要は、次のとおり付加・訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」に摘示されたところと同一であるから、これを引用する。

1  原判決四頁四行目の「所有権に基づき機器の引渡等」を「リース物件の使用損害金(予備的に同リース料と契約解除後の使用損害金)とこれに対する遅延損害金の支払」と改める。

2  同五頁一行目の「賃貸期間」を「リース期間」と、同二行目の「賃料」を「リース料」と、同三行目の「貸し渡した」を「リースした」とそれぞれ改め、同六行目の「平成九年七月一〇日」の次に「に同月一日から平成一〇年六月三〇日までの」を、同七行目の「平成一〇年七月一〇日」の次に「に同月一日から平成一一年六月三〇日までの」をそれぞれ加える。

3  同五頁一〇行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「5 控訴会社は、平成一一年三月二五日に本件物件を被控訴人に返還したため、被控訴人は当初申し立てていたその引渡請求を当審で取り下げ、リース料相当損害金については、平成九年九月一日から平成一一年三月二五日までの分に減縮したが、平成一一年三月二五日以降の商事法定利率による遅延損害金の附帯請求を当審で追加した。」

4  同一一頁九行目の「本件リース契約の更新」及び同一〇行目の「更新されたリース契約」の次にそれぞれ「(再リース契約)」を加える。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所の判断の判断は、原判決一二頁一行目冒頭から同一七頁七行目末尾までの説示を、次のとおり加除・訂正のうえ、引用するほか、後記二の判断のとおりである。

1  原判決一四頁末行の「本件リース契約」から同一五頁二行目の「(争点3)。」までを削る。

2  同一六頁二行目の「月額で約一七万円高かったが」の次に「(後記認定のとおり、リース会社に比して、借入利息相当額が多く、さらに、生命保険保険料相当額をも加算したことによると推認される。)」を、同四行目の「本件リース契約書は」の次に「典型的なリース契約書を参考にして、」をそれぞれ加える。

3  同一七頁四行目の「と保険料等の経費の合計」を「のほか、固定資産税相当額一四三万三四六〇円、火災保険料相当額一四三万四五二四円、被控訴人の借入利息相当額六三五万四〇三六円を加え、さらに、生命保険保険料相当額一四三万三四六〇円をも加えた合計である」と改める。

4  同一七頁七行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「(四) 被控訴人は控訴会社に対し、本件リース契約の期間満了前の平成八年一〇月二八日到達の書面により、その更新(再リース契約)を予め拒絶し、右期間満了時においてリース物件の返還(ただし、移動不可能な物件に限って売却を認めた。)を求める旨通知し、その後も二度にわたって同旨の通知をし、本件リース契約書一四条に定められた「双方の話し合い」も拒否した。これに対し、控訴会社は話し合いを求めたが、被控訴人の態度に変化が見られないため、同年一一月二一日ころ、再リース料を従来のリース料の一二分の一として再リース契約を選択する旨を被控訴人に通知した。」

二  そこで、争点について判断する。

1  右認定事実(原判決引用)、とりわけ1(二)の①②③の各条項及び(三)のリース料算定方法からすると、本件リース契約は、五年間のリース期間中に本件物件の取得費その他の投下資本の全額を回収することを予定した、いわゆるフルペイアウト方式のファイナンスリース契約であると認められる。もっとも、右一及び二1に認定したとおり、被控訴人はリース業を営む会社ではないこと、被控訴人代表者としては本件機器購入資金借入の危険を負うことから、投下資金の回収のみならず、右機器の所有権を取得することに着目したものと認められるが、被控訴人がリース業者に代わる形で本件リース契約が締結されたこと、前記のとおり、本件リース契約のリース料はリース専門業者のものより割高で、被控訴人には有利な条件であることからすれば、この点も右認定を左右するものではない。

2  ところで、ファイナンスリースは、リース物件を購入使用したいが即時購入する資力がないか、又は購入という方式を得策としないユーザーに代わってリース貸主が、自己の資金でリース物件を購入し、ユーザーに一定期間拘束して使用収益させ、右購入代金・金利等諸経費をリース料として回収するものである。なかでも、フルペイアウト方式によるファイナンスリース契約は、リース期間満了時にリース物件に残存価値はないものとみて、リース貸主がリース物件の取得費その他の投下資本の全額を回収できるようにリース料が算定されているものであって、その実質はユーザーに対して金融上の便宜を付与するものにほかならない。したがって、リース期間満了時には、リース物件の取得費その他の投下資本の全額が回収され、基本的にはリース貸主の目的は達成されているのであるから、その時点では、リース物件の所有権が形式的にはリース貸主にあるものの、実質的にはユーザーにあるともみることができ、ユーザーが再リースを求めた場合、リース貸主がこれを拒むことは特段の事情がない限り許されないと解するのが相当である。また、右リース契約においては、リース料債務は契約の成立と同時にその全額について発生し、リース料の支払が毎月一定額によることと約定されていても、それはユーザーに対して期限の利益を与えるものにすぎず、各月のリース物件の使用と各月のリース料の支払とは対価関係に立つものではないから、リース料は賃料とまったく同視することはできないところである。

3  そこで、本件リース契約書一四条について検討するに、右契約書は被控訴人が典型的なリース契約書を参考にして作成したこと、右契約はフルペイアウト方式のファイナンスリースであることなどに照らし、控訴会社に再リース契約の選択権を与えつつ、「双方の話し合いによって」残存価格での買取をすることも考慮したものと解される。いずれにせよ、リース期間満了時に控訴会社がリース物件を必要とするときは、その使用を認める前提で定められた条項であることは明らかである。もっとも、再リース契約の条件については明文の記載がないのであるが、フルペイアウト方式のファイナンスリースである以上、リース物件の取得費その他の投下資本は既にその全額が回収され、基本的にはリース貸主の目的は達成されているのであるから、従来のリース料と同一であるとするのはリース貸主に一方的に利益をもたらすもので不合理である。そして、証拠(甲五四、五五、乙四、五、一四)及び弁論の全趣旨によれば、フルペイアウト方式のファイナンスリースにおいては、再リース料は従来のリース料の一〇分の一ないし一二分の一とし、年間一括払いで一年ごとに更新するとする取引慣行がほぼ確立していることが認められるから、控訴人ら及び被控訴人は右慣行を前提として本件リース契約を締結したものと認めるのが相当である。

4  ところで、前記認定のとおり、被控訴人は控訴会社に対し、本件リース契約の期間満了前にその更新(再リース契約)を拒絶する旨通知し、「双方の話し合い」を拒否したため、控訴会社は、止むをえず再リース料を従来のリース料の一二分の一として再リース契約を選択する旨通知したのであるから、右条件による再リース料を従来のリース料の一二分の一とする再リース契約が成立したものと認められる。

被控訴人は、信頼関係破壊によりリース契約の更新(再リース契約)拒絶を主張するが、フルペイアウト方式のファイナンスリース契約においては、リース料の支払遅滞など契約上の義務懈怠がない限り、リース貸主において契約の解除ないしは更新拒絶をすることは一般に認められないと解すべきであるところ、本件において被控訴人が主張する信頼関係の破壊の事実を理由として本件リース契約の更新(再リース契約)を拒絶できるものとは認められない。

5  そして、前記のとおり、控訴会社は、被控訴人に対して、平成九年七月一〇日に同月一日から平成一〇年六月三〇日までの一年分の再リース料として、平成一〇年七月一〇日に同月一日から平成一一年六月三〇日までの一年分の再リース料として、それぞれ八九万六四七六円を支払ったから、平成九年九月一日から平成一一年三月二五日までのリース料相当損害金ないしは契約解除までのリース料及び解除後の使用損害金の支払を求める被控訴人の請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。

また、被控訴人が当審において拡張した平成一一年三月二五日以降商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は、被控訴人の新たな請求であるが、被控訴人において附帯控訴をしていない以上、不適法であって却下を免れない。

三  よって、これと異なる原判決を取り消し、被控訴人の本訴請求を棄却し、当審で拡張した部分を却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮本増 裁判官 野田弘明 永野圧彦)

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